

本取組は以下の3つの柱からなっています。
1.裁判員制度と刑事シミュレーション教育
裁判員制度の実現が現実の日程として迫ってきました。その中で、裁判員制度による模擬裁判が各地で行われ、その問題点や可能性についての検討が行われています。
被害者の刑事公判手続における位置づけの変化も含めて、刑事訴訟手続は大きな変革期にあります。
ところで、刑事模擬裁判は、一連の手続を理解する上ではきわめて有効でありますが、他方で負担が重すぎ、学期制をとる現在の法科大学院の授業形態では、少人数による選択科目としてしか履修が困難であります。
しかしながら、シミュレーション教育の場合、刑事裁判実務といった実務基礎科目の授業の1コマを使って、手続の一部に焦点をあわせて(たとえば自白の信用性の立証)、その部分についてのみ模擬裁判員を使った授業を行うことができます。すなわち、教室内で、たとえば裁判官役3人と市民6人による裁判員制度による合議体を作り、実際の模擬手続やビデオ公判手続を見たうえで、合議をし、その模様を学生といっしょに振り返ることも可能です。なお、授業規模によっては、実際の裁判員制度とは異なりますが、より少人数による裁判官役と市民との合議体を自由に形成することもできます。
このような、授業のコマを使った実験的な試みと検証、模擬裁判員を使った刑事模擬裁判の企画等を織り交ぜて展開します。
2.民事シミュレーション教育プログラムへの市民によるパフォーマンス評価と
学生の自己評価システムの統合
シミュレーション教育の教育としての優位性は「体験を通じて学ぶ」ことにあります。つまり、失敗こそ最大の学びにつながります。
しかし、そのためには、事前の計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)というサイクルを履践することが極めて重要です。
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市民と教員の共同によるパフォーマンス評価手法の開発
過去3年間で確立した模擬依頼者(SC)による民事シミュレーション授業は、事前に予習や調査を行って見通しを立て(法的メモの作成)、法律相談や交渉に臨み、その直後にフィードバックを受けたうえで振り返りのレポートや改訂した法的メモを提出し、コミュニケーション面、法的分析面での改善を企図するように設計されています。
しかしながら、どのような事案分析やコミュニケーションが優れた実務の実践といえるのかといった評価指標が明確ではない問題があります。
そこで、フィードバックや場合によっては期末試験において、学生のパフォーマンスをできるかぎり客観的に評価し、改善すべき点を明確化する手法の開発を目指します。具体的には、イギリスのグラスゴー大学ロースクールで実験されているような、市民の模擬依頼者による学生のパフォーマンス評価の項目や評価の仕方について検討します。パフォーマンス評価の際に用いる評価シートは、模擬依頼者による個人差をできる限り最小限にするために、可能な限り一義的に評価が可能となる簡易な評価項目で構成されています。ただし、同時に、教員ないしチューターによる評価も並行して行い、教員ないしチューターによる評価と模擬依頼者による評価がどの程度相関しているのかを検証する作業などを通じて、よりよい評価手法について模索します。
なお、この検証作業や実験結果の理論化には、かなりのマンパワーが必要であり、ビデオ編集等も必要です。また、専門家への研究委嘱もあり得ます。
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学生による自己評価システムの開発
また、これと併行して、学生自身による自己評価システムの開発も進めます。モデルとしては、やはりイギリスのInns of Court School of Lawにおける教材単位での学生の自己評価システムを参考にします。ここでも自己評価項目や自己評価方法を模索するために、教員とチューターとの共同作業や、学生別カルテの作成を視野に入れた独自のコンピューターシステムの開発等も必要となります。
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以上の手法やシステムの開発は、第三者および自己による「擬似体験」の客観的、あるいは理論的チェックを通じて、改善の水準をあげていくことを企図するものです。 |
3.その他の新しい分野での市民の協力を得たシミュレーション教材開発
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専門職責任におけるシミュレーション教材の開発
体験を通じてこそよりよく学べる分野としては、専門職責任の分野があります。法曹倫理がすぐれて単なる「為すべきこと、為さざるべきこと」についての知識を超えた、人格と結びついた実践的価値判断だとすれば、生身の依頼者から人間としての右か左かの判断を迫られる経験こそが生涯を貫く「判断力」の基礎となります。形成支援プログラムで実施した「正義は教えられるか」と題した第1回国際シンポジウムの成果を受けて、具体的な教材開発(たとえば、依頼者により「ねつ造された証拠を発見した場合」や「真実義務」をめぐるシミュレーション教材など)を進める必要があります。
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公法分野におけるシミュレーション教材の開発
公法分野は、法的概念の抽象性が高いだけに、シミュレーションを一部取り入れた教材が求められています。
例えば、ごみ処理施設や火葬場などの「嫌忌施設」の建設は、激しい住民の反対運動を招き紛争化することが多いですが、他方で当該生活圏内のどこかに建設が必要な施設であることも否定できません。憲法的な基本権を含む私権と公共の利益との衝突の中で、最終的には単なる解釈論を超えた民主的な意思形成のプロセスも問題になるところ、一定の政策の実現を目指す自治体側と、要求を政策に反映させていこうとする住民側とを想定した教材などが考えられます。 |
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1年次の法律基本科目との連携教材の開発
法律基本科目履修の初期段階である未修者1年次にシミュレーション教育の部分的導入を2006年に試行したところ、早くから、法律の勉強の意義を理解し、学習のインセンティブを保つという効果があることが確認できました。そこで、講義の一部ないし講義外での課外活動として、1年次のための簡易なシミュレーション教材を開発することも重要です。
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コンペ企画
以上の教材開発と実験的な教育の場としては、バーチャル・ローファームを用いた法律事務所同士の夏休みなどを利用した合宿形式によるコンペ企画等も考えられます。 |
